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2015年8月3日月曜日

カピバラ

どこにこの気持ちを持っていったら良いのか分からなくて。
披露するものじゃないということは重々承知です。
でも、私の体から外に出さないといけないと思って。
独り言のような、みなさん宛のような。
それは、たくさんの人が通り過ぎるTwitterでも、
友達(と仕事関係)しか繋がっていないFBでもなくて、
わざわざ私の様子を見に立ち寄ってくださる、ここしかないと思って。
私の想いと、感謝の気持ちを伝えたくて。
吉川さんに。

ミュージカル「ディートリッヒ」の演出家、吉川徹さんが亡くなられました。
日曜日にその訃報を目にしました。
ただただ信じられません。
あんなに演劇を愛していたのに。

「ディートリッヒ」は2012年。
私の3回目の演出助手の仕事でした。
演助というのは、一般的には曖昧な仕事に見えると思いますが、
まぁそうだね、比較的曖昧だと思う。
演出家周りの雑用かなぁ。演出家の仕事がスムーズに行くように立ち回るというか。
きっと、プロの演助の方はそんな曖昧な仕事じゃない、って仰ると思うけど。
でも、それ以来演助はお引き受けしていません。私には向いていないって分かったから。
とにかく、私は仕事が出来なかった。知らないことだらけだった。
そりゃそうだよ、私俳優だし!
それでも、大丈夫助けるから、というお声掛けの元、お引き受けしたのだけれど、
そりゃもうもう、自分の存在意義とか考えるほどに大変でした。無意味で無価値に思えた日々だった。
仕事が出来ない私が悪いんだけど。
そんなある日、吉川さんに「お前は仕事が出来ない。でも将来に見込みがあるから、俺が知っていることは全部教えてやる」と突然言われ、そこから、たくさんたくさん教わった。本当に、たくさん。
ランニングタイムの取り方、香盤の作り方、休憩時間の決め方、ノートの取り方、稽古スケジュールの立て方、商業作品で気をつけること、などなどなど。
稽古場でもメールでもとにかくたくさんたくさん怒られたし、みんなの前でも怒鳴られたし、無視だってされたし、私の自信も何もかもクソミソにヘナクチャにやられたけど、
吉川さんは決して諦めなかった。
だから、私は毎日稽古場に行くのが辛かったけど、諦めなかった。
本当に本当に辛くて、でもたくさんたくさん学んで、教えて頂いて、
ただただ頭が上がらなかった。
タバコ場で吉川さんのタバコに付き合いながら、いろんな話を聞いた。
子供時代のこととか、この業界に入ってからの苦労とか。
キャストのみなさんとスタッフのみなさんとの関係性の違いも見た。
たくさん怒られたけど、たくさん与えてもくださった。
それらの合間に、吉川さんの孤独も見た。
そして、演劇への愛を見た。感じた。
吉川さんの演劇への愛に触れて、感動した。
「俺は隙間産業だけど、お前は頑張れ」って言われたことを今ふと思い出した。
とにかく頭が上がらなくて、演助の仕事が全う出来なくて、たくさんご迷惑をお掛けして合わせる顔がなくて、大阪での初日が開けて私の演助としての仕事が終わって、
逃げるようにして東京に帰ってきた。
その後長文のお礼のメールを送ったら、
https://www.youtube.com/watch?v=UF8uR6Z6KLc
のURLが貼ってあるだけの返信があった。

そして、2013?14年?岸田國士の朗読劇を演出した際に、
吉川さんが観にいらしていた。
終演後に、合わせる顔がなくて、ただただ謝った覚えがある。
そうしたら、岸田國士は演出家がみんな通る道だから続けてがんばりなさい、
って言って頂いたのを覚えている。
土下座してお礼をお伝えした。

その後、吉川さん主催の朗読ミュージカルを拝見した際に、
ご挨拶させて頂いたのが最後だ。
その際、やっとすこぉしだけ、合わせる顔がなくて申し訳なくて避け続けいてた吉川さんと、すこぉしだけちゃんとお話出来た。
何話したか忘れちゃったけど、今後の演劇界についてだった気がする。
とにかく、吉川さんは演劇を愛していたから。

演劇をやっているからと言って、みんなが演劇を愛している訳ではありません。
愛していない人、たくさんいます。
でも、吉川さんは演劇を愛していた。
そして、その演劇への愛は、ざっくり分けたら、私と同じ方向を向いた愛だったと私は感じている。
あんなに演劇を愛している人を失うことは、日本の演劇界にとって大きな損失となるだろう。
有名無名じゃない。作品の大きさじゃない。お金じゃない。
吉川さんは、演劇を愛していた。

だから。
とても哀しい。
悔しい。
私は、たくさん怒られてたくさん迷惑を掛けて、
でも応援して下さってて、だから、もっと頑張りたかった。
いつか、吉川さんとちゃんと向き合いたかった。
演劇は無力なのか。
演劇への愛があっても、生きていくのは辛いのか。
私には分からない。
分からないほどに、私はまだ若輩だ。

今私が演出家として仕事をする際に、
吉川さんから学んだことがたくさん活かされている。
私の演出を受けたことのある方がこのページを読んでいるとは思いにくいけれど、
みんな絶対に聞いたことのある、私がノート取るときに、ノートに縦線引くでしょ、
シャーっていう音。
あのノートの取り方は、吉川さんに習ったんだよ。
とかね。他にもたくさんたくさん。

教えて頂いたことを今後も活かして作品を創り続けること。
演劇を愛し続ける限り、教えて頂いたことは私の血となり肉となり続ける。
いつかゆっくりお話したいですって伝えたまんまになっちゃったよ。
そのいつかの為に、私はこれからも直向きに真摯に演劇に向き合う。

心からの感謝の気持ちでいっぱいです。
たくさんどうもありがとうございました。
どうぞ安らかにお眠りください。

ご冥福をお祈り致します。

お前カピバラに似てるな、って言われてた保科由里子より